企業が実践したい人材不足を解決させる取組み

1 はじめに

人材不足を解決するには、採用方法の改善による社員獲得や、福利厚生の充実による定着率の向上など、さまざまな改善方法が挙げられます。状況に応じた適切な改善方法を実施し、採用の活性化と従業員の定着を図りたいところです。今回は、人材不足を解決させる取組み事例をご紹介します。
 

※出典:厚生労働省「人材確保に効く事例集」
※「人材確保の仕組み」図参照

2 人材不足対策の事例

人材不足対策には、さまざまな施策が必要です。そこで、厚生労働省が2015年度から2017年度にかけて行った「雇用管理改善促進事業」で、社会保険労務士が雇用管理改善に向けて行った提案事例をご紹介します。


●事例1 運送会社:ウェブサイトの改善

最初にご紹介するのは、東京都内に本社がある運送会社の事例です。
運送業界は、求人の新規依頼が増加しているにもかかわらず、それに対する応募者の少なさが課題となっており、業界全体で人材不足が進行しています。

社会保険労務士は、ドライバーが就職活動においてウェブサイトの求人情報を重視しているということを踏まえ、企業の魅力を伝えられるようにウェブサイトを改善すべきと考えました。
具体的改善内容としては、「求職者の目にとまるウェブサイトの構築」を目的として、次のような提案を行いました。

  • 日々の業務内容を紹介するコンテンツを掲載する
  • 社員の勤務状況や、働きやすさが伝わるコンテンツを掲載する

この提案を基に、運送会社は次のようなウェブサイトの改善を実施しています。

  • 従業員の許可を得て、実際に働く風景が伝わる写真を掲載
  • 過去に実施した会社の働きやすさや満足度に関する従業員アンケートの結果を、従業員の声として掲載

その結果、ウェブサイトからの問い合わせも増加しました。そのため、面接に来た応募者の中から、活躍できそうな人材を選んで採用できるようになりました。


●事例2 保育園:有給休暇の取得促進

次は、30年以上の歴史を持つ保育園の事例です。保育士は児童を預かるという業務のため、長期の有給休暇を取得することが難しいという課題があります。園全体はシフト制で日々の勤務をコントロールしているが、決まったシフトに対して有給休暇を取得して年間の休日日数を増やす、ということが難しい状態となっていました。

社会保険労務士は、休暇取得の難しさが職場全体の業務負荷を高めており、今後人手不足に陥っても「応募者が少ない」「採用しても定着しない」といったリスクを指摘。そこで、「年次有給休暇の計画的付与の実施」を提案しています。

保育園は、社会保険労務士の提案を受けて、職員全員が休めるように年次有給休暇の計画的付与を実施しました。具体的には、年度初めに職員全員で日程を調整し、誰もが前年度より2日多く休暇を取得できるように調整するというものです。
実施結果として、職員全員が提出した第三希望までの休暇から2日間を取得できました。休暇を取得できるようになった効果は非常に高く、職員のモチベーション向上や、休暇取得のための業務効率化もなされました。また、職員と経営者の信頼関係も良好になっています。


●事例3 訪問看護ステーション:納得のいく人事評価

最後は、訪問看護に加え、デイサービスや居宅介護支援事業所、障害者就労支援サービスも行っている訪問看護ステーションの事例です。

この訪問看護ステーションは、研修への参加やキャリアアップ規定を定めるなど、雇用管理に力を入れていました。しかし、人事評価において代表に決定権限が集中していたため、適切な評価がなされておらず、「代表の好みが人事に反映されているのではないか」という誤解が生じていたといいます。

そこで、社会保険労務士は、人事評価の改善策として、キャリアアップに関する規定と、評価制度の在り方(特に、評価の意義やフィードバックの方法)について見直すことを提案しました。

これを受けた訪問看護ステーション側は、評価制度の見直しについて、内容の抜本的な変更ではなく管理職への浸透の徹底と面談の訓練を中心に運用について見直しを行いました。実際の改善点は以下のとおりです。

  • 面談においては最低限の基準を設け、公平感の醸成と浸透を意識した運用マニュアルを作成する
  • 人事評価のフィードバック時には、管理職のコメント通知を必須項目とする

この改善の結果、人事評価が単なる賞与支給のためではなく、職員の成長を支援するためのプロセスであることが伝わりました。また、管理職への人事評価に関する訓練も実施した結果、評価のばらつきが緩和され、職員の中でも公平感・納得感が高まったとのことです。

3 おわりに

人材不足対策について、運送会社、保育園、訪問看護ステーションの事例をご紹介してきました。実施されたウェブサイトの改善や有給休暇の取得促進、人事評価制度の見直しなどの改善策は、どの業界・業種においても有効といえるでしょう。
新たな人材の確保だけでなく、すべての従業員の定着化を図るためにも、採用活動シーズンを迎える前に、人材確保対策として実施できる要素はないか、企業サイトや社内制度などを見直してみてはいかがでしょうか。

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