水災リスクに備えるための対応策とは

水災リスクに備えるための対応策とは

1 はじめに

近年、台風や局所的なゲリラ豪雨などによる水災被害が数多く発生しています。
たとえば、平成27年9月の関東・東北豪雨では、鬼怒川が決壊し、広範囲において床上・床下浸水の被害に見舞われたことは、ご記憶の方も多いのではないでしょうか。
それでは、水災に対して、企業にはどのような対策が求められるのでしょうか。
本コラムでは、台風対策のうち、企業に求められる水災対策に焦点を当てて、基本的な事項を解説いたします(風災対策については、もう一つのコラムを参照ください)。

2 水災により生じる被害と影響

水災対策の中身に入る前に、水災により生じる被害としては、具体的にどのようなものがあるのか確認してみましょう。主だった被害としては、以下のものが挙げられます。

直接損害間接損害
  • 建物や工場の浸水、土砂等の流入
  • 機械の電気系統や受変電設備の故障・破損
  • 商品(在庫品)等の被災            etc.
  • 売上の減少
  • 事業中断中の人件費等

このうち、特に注意を要するのは、自社が被災し、事業の中断を余儀なくされた場合はもちろん、自社が直接の被災をまぬがれた場合でも、電気・水道・ガス等の公共インフラ設備が被災し、ライフラインの供給停止が発生することで、事業を中断せざる得ず、売上の減少や事業中断中の人件費等の間接損害が生じ得る点です。
この点は、後述する事業継続計画BCPを策定する際にも見落としがちなところですので、注意してください。

 

3 企業に求められる水災対策

それでは、このような水災によるリスクに備えるため、具体的にどのような対策が求められているのでしょうか。

(1)浸水リスクの確認

洪水等が発生した場合に、自社の周辺でどの程度の浸水が想定されているかについては、浸水ハザードマップから知ることができます。自社の立地等を踏まえ、どの程度の浸水リスクがあるのか確認をしてみましょう。
各自治体のハザードマップを調べる際には、国土交通省のハザードマップポータルサイトが便利です。

国土交通省ハザードマップポータルサイト

(2)具体的な被害の想定

次に、実際に被災した場合、自社にどのような被害が生じるのか、直接的な損害に加え、間接的な損害についても具体的に洗い出すことが大切です。
たとえば、一定規模の水災が発生した場合、電力会社は、漏電を防ぐために特別高圧電流の遮断を行うことがあり、これにより機械の緊急停止を余儀なくされた場合、再稼働までに一定時間を要する場合があり得ますので、その点も考慮しましょう。

(3)浸水対策用品の準備と排水系統の点検・清掃

そのうえで、事前にできる対策としては、まず土嚢や止水板などの浸水対策用品の準備や排水系統の点検と清掃があります。排水系統にゴミや草木等が詰まっていると適切に排水されず、敷地内に水が溜まり建物内部に浸水しやすくなるため、日頃の点検が大切です。

(4)浸水被害の軽減策とデータ保存等

また物理的に可能な場合には、サーバーやパソコン、さらには機械や電気設備等を一定の高さがあるところへ設置する、あるいは緊急時に移動できる準備を進めておくことが大切です。また、重要データについては、日頃から定期的にバックアップを行う仕組み作りを心がけましょう。

(5)損害保険の活用等

もっとも、どれだけ対策を重ねても完璧な備えは不可能です。そこで、万が一に備え、損害保険の活用等も検討することも大切です。すでに加入している場合には、どこまでが保険でカバーされているのか、これを機に契約内容を再度見直してみてください。

4 水災や風災を想定した事業継続計画(BCP)の策定

地震を想定した事業継続計画と比べて、水災や風災を想定した事業継続計画の策定については、手が回っていない企業がほとんどではないかと思います。
しかしながら、地震は揺れの直後から被害が生じるのに対し、水災や風災は、事前にある程度、予測が立つことが多く、被害が生じるまでに一定の時間的猶予があり、この時間的猶予を防災に活用できるところが地震防災との大きな違いです。
企業に求められる水災対策に記載した内容を実行することは、事業継続計画(BCP)策定とも重なる部分があります。
具体的な被害が生じるまでの時間的猶予を使い、効率的に防災対策を実施するためにも、水災や風災用の事業継続計画を策定し、緊急時対応業務と優先度の高い通常業務の仕訳、目標復旧時間の設定等をしておくことが有用です。

(このコラムの内容は、平成30 年4月現在の法令等を前提にしております)。

(執筆)五常総合法律事務所 弁護士 持田 大輔


MKT-2019-507

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