最近のリコールの特徴に備えた対策を行っていますか?

1 リコールに背を向けない姿勢が重要に

近年、製品の安全性に対する規制強化や消費者の意識向上を背景として、リコールリスクは、製造業を営む企業を中心にますます重要な経営課題の1つとなっています。

リコール対応の遅れやリコール隠しなどが発覚した場合、信用の失墜や風評リスク、さらには消費者の買い控えによる収益の減少など、企業には、適切にリコールを行うよりも多額の経済的損失が生じる場合があり、現在では、「リコールを行うこと」ではなく、「リコールを適切に行わないこと」がリスクとなっています。

今回のコラムでは、リコールを取り巻く状況が変化していることを踏まえ、最近のリコール件数と特徴、さらには部品メーカーからみたリコールリスクについて、概要を解説いたします。

 

2 最近のリコール件数と特徴

はじめに、最近のリコール件数と特徴から見ていくことにしましょう。

経済産業省が公表をしている資料によると、平成30年の重大製品事故(※)受付件数は合計813件(表1)、同年に開始された自主リコールの件数は75件(そのうち、重大事故契機は19件、非重大事故契機は56件)とされており(表2)、リコール対象製品による重大製品事故は重大製品事故全体の約1割を占めています。

(※)重大製品事故とは、製品事故のうち、発生し、又は発生するおそれがある危害が重大であるものとして、当該危害の内容又は事故の態様に関し政令で定める要件に該当するものをいいます。

recall_H1_H2.png※いずれも経済産業省「平成30年における製品事故の発生状況及び課題」を基に作成

また、最近のリコールの特徴としては、以下が挙げられます。

Recall_tree_1.png

今後、高齢者人口の増加はもちろんのこと、これまで以上にインターネット経由での取引が増え、内閣府が提唱をしている「Society 5.0」社会の実現に向け、リチウムイオン蓄電池を搭載したIoT製品の需要も高まります。併せて、リコール対象台数の増加要因の1つとされている「部品の共通化」も相応に増えることが予想されることを踏まえると、近時増加傾向にあるこれらの事故等が、さらに増えていくことが予測されるとともに、企業経営におけるリコールリスクへの備えも、益々重要になっていくものと考えられます。

※出典:内閣府「Society 5.0

 

3 部品や原材料メーカーから見たリコールリスクとは?

部品や原材料メーカーは、完成品の製造事業者が実施するリコールに関する諸費用の分担等について、対応を求められることがあり、最近では、完成品の製造事業者から部品や原材料メーカーに対し賠償請求がされる事案も出てきています。

それでは、このように重要性を増すリコールリスクについて、部品や原材料メーカーを例に、どうすべきか考えてみましょう。

納品した部品の不具合が原因で事故が発生した場合でも、リコールはあくまで完成品について実施されるものであるため、リコールを実施する事業者は、原則として完成品の製造事業者等になります。

このため、部品や原材料メーカーは、通常、自らリコールを実施することはありませんが、その一方で、原因部品に関与した部品・原材料メーカーに対しては、リコールを実施した完成品の製造事業者から求償等の形で費用負担や損害賠償請求をされる可能性があり、リコールリスクは、部品や原材料メーカーにおいても手当てが必要なリスクといえます。

 

4 リコールにはどのような費用がかかるのか?

次に、実際にリコールを行う場合、具体的にどのような費用が生じるのか見ていくことにしましょう。

経済産業省が公表をしている「消費生活用製品のリコールハンドブック2016」によれば、リコールに要する費用として、以下の費用が挙げられています。

※出典:経済産業省「消費生活用製品のリコールハンドブック2016

Recall_tree_2.png

事案によっては、これらに加え、被害者への賠償等の費用、販売事業者に対する損失補償等の費用、リコール後の自社信用回復のための活動費用、設計や製造方法の改良や変更に伴う経費等が必要になる場合もあります。

このように、リコール費用には様々なものが含まれるため、完成品の製造事業者から請求を受ける金額が高額化する可能性もあることに注意が必要です。

 

5 リコールリスクへの備え

製品不良や不具合を防止するためには、製品の製造過程全体に対する安全管理体制を構築し、自社における品質管理やその他リスクアセスメント等、製品安全の取り組みを強化することが重要であることはもちろんです。

しかしながら、周到に製品安全管理体制を整備し、厳しい品質管理やチェックを行ったとしても、製品事故等の発生を完全に防止することは難しいのが現実です。

このため「製品事故等は我が社でも起こり得る」との前提のもと、平時よりリコールに備える準備を行い、製品事故等の発生または兆候を発見した場合には、迅速に対応できる体制を整えるとともに、上記のとおり、リコール費用には多額の費用が生じる可能性を踏まえ、あらかじめリコール実施に要する費用を考慮し、生産物回収費用保険(リコール保険)の利用等も検討しておくことが大切です。

(このコラムの内容は、令和元年5月現在の法令等を前提にしております)。

(執筆)五常総合法律事務所 弁護士 持田 大輔

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