【経営者から学ぶ】女性が活躍し続けられる社会への「アイキャンディ」の挑戦

いま、目の前にある課題にいかに向き合い、行動していくべきかー。リーダーに求められる挑戦し続ける姿勢とは。

「経営者から学ぶ」対談シリーズは、企業経営にも通ずるチームマネジメントのスペシャリスト、青山学院大学陸上競技部を箱根駅伝4連覇、大学駅伝3冠へと導いた原晋監督が様々なフィールドで活躍する経営者オーナーとの対談を通じて、日本を革新していく中小企業経営のヒントを探っていきます。

第二回は東京都八王子市にあるデザイン会社、アイキャンディ株式会社。女性ならではの視点を活かしたユニークな経営についてお話を伺いました。

努力することをやめないことがチカラになる

青山学院大学陸上競技部 監督 原晋氏(以下、原氏):アイキャンディさんは、全従業員が女性、とのことでオフィス内も華やかですね。なんだか、居心地がいい。 

アイキャンディ株式会社 代表取締役社長 福森加苗氏(以下、福森氏):ありがとうございます。

原氏:事業内容はどのようなことを?

福森氏:Webや広告、空間などのデザインを手がけています。

原氏:創業が1993年で、福森さんが会社を継がれたのが2007年。以降これまでの12年間でぐんぐん業績を伸ばしていった理由や、社員に一体感を生む秘訣、選択肢の多い働きかたなど、アイキャンディさんならではのユニークな取り組みについてお話しを伺えればと思います。 

福森氏:よろしくお願いします。

原氏:さっそくですけど、女性という立場で社長業を継がれるとき不安などはありませんでしたか?

福森氏:大いにありましたね。経営に関する知識や経験がなかったうえ、12年前の日本ではビジネスはまだまだ男性のもの、というのが常識でしたから、その中でやっていけるのかという不安がありました。

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原氏:もともと社長を目指していたわけではなかった?

福森氏:はじめは低い志で入社したのですが、そのうちに「仕事は責任感を持って行わねばならない」という気づきを得てコツコツと努力し、やがて前社長やお客様から認めていただいて事業承継したという背景があります。

原氏:なるほど。わたしは学生たちに「チャンスの大切さ」を伝えていますが、福森さんは仕事に対する責任感という気づきを得て、「社長」というチャンスを掴むまでに努力されたんですね。

福森氏:努力では負けませんね。高校時代に器械体操をやっていて、3年間ずっとインターハイに出場するほど朝晩努力していましたから。恩師からも「お前のいいところは、努力するところだ」とそこは評価されました。

原氏:箱根駅伝も、部員が50人いても実際に出られるのは10人だけ。では、それ以外の40人は努力しないでいいか、というとそんなことは決してない。「今している努力は将来役立つ」「努力は無駄にならないから続けるように」と常に部員に伝えているんです。

福森さんも恩師からの言葉をきちんと自分の中に受け入れて、一つひとつ努力をして花開いたんですね。まずは自分が何になりたいかを考え、それを想像する。その願いが強かったからキャリアへの道が開き、社長になるというチャンスを掴んだ。

福森氏:おっしゃるとおりです。それを胸に、ずっと頑張ってこられました。

女性が活躍しやすい環境を社内外で整備

原氏:社長業を継がれる際に、どうすれば男性社会の中でも女性が活躍できるように考えられたかと思いますが、実際にはどんな取り組みをされたのでしょうか。

福森氏:いくつかあるのですが、1つは情報の発信です。例えば、ビッグサイトで開催される「レジャー&サービス産業展」では女性の活躍を推進すべく、女性の労働力をどのように活用できるか、戦力とするか、といったお話しをさせていただきました。また、Facebookページも2011年に開始し、女性が活躍する世の中にすべく、情報を発信しています。

原氏:まずは知ってもらう活動ですね。

福森氏:そうですね。2つめは、自社の職場環境の改善ですね。まずは、社内のギスギスした雰囲気を取り除くことからはじめました。

原氏:今はこんなに和気あいあいとしているのに、そんな時期があったんですか? 

福森氏:社長になる前、わたしは鬼上司として知られていたんですよ(笑)。

原氏:ええ?! 信じられないなぁ。

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福森氏:コミュニケーション下手だったんですよね。それでお互いをもっとよく知ることができるようにランチを一緒にとったり、面談回数を増やしたりしてコミュニケーションを密に取るようにしたんです。そうするうちに、徐々にではありますが社員から信頼してもらえるようになりました。

就業時間の改善面では、一時「残業時間削減!」という強硬策を採っていたんですが、残業してでもいいものを仕上げたいという社員には「納得のいく仕事ができなくなった」、という不満につながり大勢辞めてしまったんですね。

原氏:デザイナーさんたちは言ってみれば職人さんだから、自分の成果物に満足できなければ、反発もするでしょうね。「天才肌の人には自由にやらせなさい」って、わたしたち陸上の指導者も留意していますから。

福森氏:そうなんです。それで「社員」「パート」「時短勤務」「自由勤務」「ダブルワーク」「テレワーク」「外注」という具合に働きかたをいろいろと選べるようにして自主性を重んじるようにしたんです。

みんなが会社に同じ時間に来て同じような時間に帰っていく、という勤務形態であれば管理も楽ですが、これだけ多種多様な働きかたを導入すると、管理が難しく頭が割れそうに悩みました。それでも、みんながいきいきと働いている様子や、辞めていく人が減って社員の定着率が上がったこと、ワークとライフのバランスが取れて家族の皆さんにも好評なのを見て、「やって良かったな」と感じるようになりました。 

原氏:アスリートの世界でも、女性にちゃんとチャンスを創って環境を整えてあげるとものすごい能力を発揮する。それと同じで、ビジネスの世界でも女性に働く環境を用意してあげれば、絶対に能力が開花する、つまり女性の活躍する場を用意している会社が伸びる。アイキャンディさんは、それを実証した、ということですね。

福森氏:原監督にそう言っていただけると嬉しいですね。

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駅伝も会社経営も大切なのはチームとしての一体感

原氏:ところで、テレワークにも取り組んでいるということですけど、仕事と家庭の両立ができ主婦であっても能力を発揮できるというメリットがある反面、同じ場所にいないことで一体感が失われるというデメリットが生まれる。そう僕は思ったのですが、どのように解消しているのでしょうか。

福森氏:そうですね、意思の疎通がしづらいこともあるので、定期的に家族ぐるみのイベントを開催しています。それもわたしが「やろう」と言っているわけではなく、社員が自分たちから言い出して。

原氏:「一緒に時間を共有したい」という欲求を満たすことで一体感が生まれて、さらにモチベーションアップにもつながる、というわけですね。これは女子マネージャー教育にも活かせるかな。

福森氏:ぜひ(笑)。

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今の“非常識”を“常識”に変えていくチカラ

原氏:ほかにも、子育て中の女性が働く職場だからこその取り組みもあると聞いています。子連れ出勤がOKだとか。

福森氏:一応、社員たちは子どもを保育所に入れているんですが、納期が近いとお迎えに行ったあとも仕事をしなくちゃいけないことがあるんです。そうすると、オフィスに子どもたちが集まる、という感じになり……。

原氏:子どもたちが隣でわちゃわちゃしている中で仕事するんだ(笑)。いいと思いますよ、子どもが職場にいてちょっとぐらい泣き声が聞こえてきても。それって当たり前の風景だと思います。もし、「当たり前じゃない」って言うのなら、それを当たり前だという風土を作っていかなくちゃいけない。今、社会の非常識だと思われていることを常識にしていかないと、女性の社会進出や活躍も進展しませんよね。

福森氏:弊社はそれが許されているから、子育て中の主婦でも辞めないでいてくれるのかもしれないですね。

原氏:子どものいない方も加わって、みんなで子育てする。なかなかいい環境だと思いますね。そういえば、有給休暇のことも「女性のわがまま休暇」って呼んだりするんですよね。なんで「わがまま」という名称に?

福森氏:「有給」って給料をもらいつつ休む、という語感に抵抗があるからみんな取らないんじゃないかな、と思ったんです。「お給料もらって寝てる。」みたいな。

原氏:わはは、そのとおりだ(笑)。

福森氏:でも、「明日、わがまま休暇取りまーす」とか「昨日はわがまま休暇ありがとうございましたー」だと言いやすいですよね? 今から思えば原監督のご著書にある「キャッチフレーズにして伝えよ」というのと同じで、当時言いやすい言葉にしてみようと思ったんです。 

原氏:大作戦シリーズね(笑)。さすが、できる社長は考えることが違うなぁ(笑)。

福森氏:いえいえ(笑)。

原氏:会社を継がれてから12年。女性の社会進出について変わったと思うことはありますか。 

福森氏:以前は「責任者呼んでこい」とまで言われたことがありましたが、今では女性ならではの視点や気づきを活かした仕事ぶりが評価されるようになり、商談に行くと「よく来たね」と歓迎されたりしてビジネスの世界でも女性が活躍できるという認識がだいぶ高まってきたなと感じますね。

原氏:女性がいきいきと働けるようになってきた。

福森氏:仕事に本腰を入れる、責任を持つ、というところで女性の意識改革もまだまだ必要ですけどね。

原氏:男性、特に夫からの支援や応援も必要だよね。彼らの意識改革も必要。奥さんがご飯を作り、夫の帰りを待つ、という常識を捨ててほしい。女性は女性で「ご飯作らなくちゃ」「掃除しなくちゃ」「あれしなくちゃ、これしなくちゃ」と真面目すぎだから、もうちょっと不真面目でもいいんじゃないかなぁと感じますね。 

福森氏:非常識とされていることを常識に、ですね。うれしいですね。男性の口からそう言ってもらえるのはありがたいことです。 

もちろん、性差があるから、苦手な部分もある。ただ、そういう部分は得意な人に頼ってお任せする、相談して、ヒントをもらって、考えて咀嚼して。周りを頼ることは恥ずかしくないことだという意識も持ちたいですね。

原氏:ここまで、女性ならではの視点に基づいたお話を聞いてきて、その中に中小企業が抱える悩みを解決するヒントがたくさん含まれていたように感じます。加えて中小企業経営者の方に「これだけは伝えたい」ということってありますか。

福森氏:はじめる勇気とやめる勇気をもってほしいな、と。とりあえず「1年間、これでやってみるよ! でも、だめだったらやめるよ!」でいいと思うんです。とにかく、やれることははじめてみて、だめだったらやめる。そういう勇気を持ってもらいたいですね。

原氏:はじめても、やめても、命まで取られるわけじゃないですしね。

福森氏:そうなんです。それから社員さんたちとお昼ご飯を是非一緒に食べてください。ちょっとしたことですが、わたしもそうすることによって、コミュニケーション下手という苦手を克服して、社内に一体感をもたらすことができました。そのおかげで、「居心地が良い」と原監督にお褒めいただけるような雰囲気が生まれたんです。

原氏:会社は1つのチームですからね。一体感を保つためにも、また社員たちを奮い立たせるためにも大切ですよね。福森さんが努力されている様子、また魅力ある会社の雰囲気からも、それを大切にされていることがよくわかりました。

今日はありがとうございました。

最後に

原氏:中小企業を経営するみなさんが日本社会をしっかりと支えてくださっているお蔭で、日本の成長は続いているのだと思います。日本の技術、働く意欲を持っていらっしゃるのは、中小企業で働くみなさんです。シリーズとして、一つでも多くの学びをお届けすることで、経営者のみなさんの一助となれればと思います。

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— 2019/07/19

青学 原監督の組織づくりと人材育成の秘訣を探る。

いま、目の前にある課題にいかに向き合い、行動していくべきかーーリーダーに求められる挑戦し続ける姿勢とは。 「経営者から学ぶ」対談シリーズでは、企業経営にも通ずるチームマネジメントのスペシャリスト、青山学院大学陸上競技部を連続優勝するチームへと導いた原晋監督が、様々なフィールドで活躍する経営者オーナーの実例を検証し、日本を革新していく中小企業経営のヒントを探っていきます。

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